平成16年DA62Vのエブリー、67000km走行。
高速道路を走行中、突然エンジンが止まって走行不能になったという。
この年式の頃のK6Aエンジンはクランク角センサーがよく壊れるので、最初はこれがだめなんじゃないかと思った。運び込まれてすぐにエンジンをかけてみると、1発死んでるが何とか回っていた。
何だ?と思い下を見ると、エンジンオイルが噴出していた。持ち上げてみてびっくり!クランクケースに大穴が開いてるじゃないですかw
よくよく見るとクランクに付いてるはずの2番シリンダのコンロッドが見当たらないし、クランクケースは向こう側にも大穴が開いてる・・・レーサーのエンジンじゃあるまいし、なんで足が出るかな・・・w
この手の軽トラやバンは車体が完全に駄目になるまで使われるらしく、縦置きのK6Aエンジンの中古品は非常に品薄状態になってるらしい。10万km以上の中古でも10万円以上する有様で、リビルト品になると20万円以上もする。
懇意にしてる解体屋さん頼んだら、運良く仲間内から格安の値段で調達してくれた。
中古エンジンが手に入らなかったら、腰下の部品かき集めて直そうかとも思ったが、部品代だけで結構な額になるので諦めた。
エンジン載換えできたので、何がおきたのか分解してみる事にした。
このお客さんはエンジンオイル管理がいい加減で、2万kmぐらい平気でそのままで使っていた。以前から注意する様に言っていたのだが・・・
カーボンが堆積してオイルシールが痛み滲んできている。
オイルパンを外してみると、2番シリンダピストンがオイルリングの辺りから割れて、ピストン上部だけシリンダに残っていた。奇しくもこの前のライトエースと同じ様な壊れ方だ。 ただ違うのはコンロッド大端のクランクピンが異常な焼け方をしている。
オイルパンの底にはピストン下部が粉々になって残っていた・・・
ヘッドカバーをはずして見入ると、ヘドロ状にスラッジが溜まっている。7万kmも走ってないのに、こんなに溜まってるのは異常だw
スラッジは溜まっているが、カム山やジャーナルは意外と摩耗してない。いままでの経験上、オイルはとりあえず入っていれば極端に摩耗する事は無い。しかしオイル交換のサイクルが長くなればその分カーボンが堆積してくる。
燃焼室はそれほどカーボンは溜まっていない。
2番は排気バルブに当たった後がある。
あれだけオイル管理が悪くてもクランクのジャーナルも大きな摩耗はない。
正常なシリンダのピストンは、オイルリングはおろかコンプレッションリングまでも固着していた。
オイルリングの固着はオイル消費の原因になる。
シリンダにはクランクジャーナルから飛び散ったオイルが付着して潤滑を行っているが、付着したオイルはオイルリングで掻き落とされて、オイルリング溝の奥にある穴からピストン裏に落される。カーボンが堆積してこの穴が塞がれば、オイルは掻き落とせなくなりシリンダ内で燃焼して無くなる。
2番のクランクジャーナルだけが異常に焼けている。
おそらく落ちたカーボンがオイルギャラリを塞いで潤滑不良を起したのではないだろうか。
2番シリンダにはピストンヘッドが残っていた。シリンダ側面 は相当強く当たったらしく、ライナーが裂けて冷却水がシリンダ内に漏れている。
クランクピンが焼きついて固着し、ピストンがシリンダ側面に無理に押された事によるのだろう。その衝撃でピストンはオイルリング溝の辺りから砕けて、コンロッドがケース内で暴れて飛び出した様だ。
しかしこのK6Aエンジンというのは華奢な作りだな。(ある意味攻めた作りで無駄がないともいえる)
シリンダはオープンデッキでライナーもサイアミューズでなく一本づつ独立している。ターボ車で下手に加給圧上げたらすぐ壊れそうだw
2番ピストンは凄まじい壊れ方だ・・・
クランクケースには両側に大穴が・・・
ちょっとぶっ叩けば真っ二つになりそうだw
結局2番のコンロッドはこの僅かな破片以外はエンジン内には残ってなかった。
破片の色から見ても相当焼けていた感じだ。
しかし高速道路上にコンロッドを落っことしてくるとは・・・