この手の修理はプロペラシャフトを外して、コンパニオンフランジを抜き取り、オイルシールを外して交換する事が多い。
このエブリィもその様に修理したのだが、一年ほどしたら、デフから音が出る様になってしまった。どうやらドライブピニオンのベアリングが駄目になった様だ。
デフをオーバーホールには専用工具が必要になり、作業も大変なので、中古のデフを調達して交換した。
何故ベアリングが駄目になったのか、その時はわからなかったが、ある日サービスマニュアルを眺めていたらその原因がわかった。
ドライブピニオンのベアリングのプレロードは、コンパニオンフランジを止めるナットにより、図の5のスペーサーが塑性変形する事で調整されていたのだ。
故障の原因はつまりプレロードが狂ってしまったからだった。
スペーサーを塑性変形させて調整するので、基本的にはコンパニオンフランジを取外した時は、スペーサーを新品に交換してプレロード調整をしなければいけない。しかし、スペーサーはデフ内部に組まれているので、交換にはデフ本体をばらす必要がある。
メーカーに確認したところ、やはりオイルシール交換にあたっては、内部のスペーサーを交換してプレロード調整してやるべきだとの回答を得た。
ディーラーさんに聞くと、この構造は知らなかった様で、車載で分解せずに行っているとの事だった。運がよければ問題なかったのだろうが、多分なかには後で壊れたりしたのではないだろうか。
しかしダダ漏れになっていたらオイルシールを交換しないわけにはいかない。
さすがにデフを分解してやっていたら、修理代はとんでもなくなってしまう。
やるとしたらこうするのがいいか・・・
① 分解する前にコンパニオンフランジのナットの締付位置をマークして慎重に緩める。
② 緩めたら一度静に締め付けていって、ナットが座面に当たる位置を見る。この位置と締め付けてあった位置の角度を記録しておく。
③ オイルシールを交換して、コンパニオンフランジを取り付けてナットを座面に当たるまで静に締め付ける。(ナットはつぶしてロックするタイプなので交換する必要がある)
④ ②で記録した角度まで締め付ける。これでもとの締付状態に戻ったはずだが、一度変形したスペーサーをまた変形させる事になるので、プレロードが若干足りなくなる可能性がある。そこでほんのちょっとさらに締め込んでやる。
⑤ これでナットの頭をつぶし回り止めして終了。
プレロードはある範囲内に入っていればいいので、もともとがプレロード過剰気味になっていないかぎり大丈夫だろう。
この辺りの構造はスズキ以外ではどうなっているのだろうか?と思い調べてみた。
ちょっと古いがトヨタのSR40系のライトエースを見たら、やはり同じ様にスペーサーを塑性変形させて調整している。軽や小型にはこの構造が多い様だ。
トヨタ場合は、コンパニオンフランジを取外した側からベアリングが外せる様になっていて、外からスペーサーを交換できる様になっている。
マニュアルにもオイルシール交換時はプーラーでベアリングを外して、スペーサーを交換してプレロード調整をしろと書かれている。
しかしプーラーは特殊な形状のものが必要だし、外したベアリングを打ち込むのもかなり大変な作業だ。それに左右輪のドライブシャフトがついた状態でプレロード調整がはたしてできるだろうか?
結局余程漏れていないかぎり、この部分のオイルシールの交換はやるべきでないのかもしれないな・・・
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